リレーコラム もくlog

リレーコラムもくlogは、木造建築に関する出来事や気になる情報、各取り組みへの感想など
協議会会員を中心にリレー形式で定期的に掲載するページです。

栃木県林業大学校「研修・研究棟」の紹介 ~とちぎ版中大規模木造建築のシンボル~
執筆・制作者
大谷 直希(栃木県林業センター 研究部木材チーム 主任研究員)
掲載年月日
2024年5月15日

 栃木県は品質・強度に優れた丸太の産地であり、また首都圏に近い立地性から、林業・木材産業における「川上・川中・川下」すべてに優良企業が存在している全国屈指の林業・木材県です。一方で、現在の県内林業従事者は約650人で、大きな木材需要に対する丸太の供給体制が整っているとは言い難い状況です。林業の成長産業化のためには林業人材(労働力)の確保・育成が喫緊の課題となっています。

とちぎの通直・完満で真円に近い断面の丸太

 こうした背景の下、林業人材育成はもちろんのこと、とちぎの林業マンの社会的地位や所得水準を向上させる旗印となる機関を目指し、栃木県林業大学校が今年(2024年)4月に開校しました。
 林業大学校では、林業を体系的に学ぶとともに、就業に必要な資格を取得したり、実際の林業の現場で個別指導による実地研修を行うことで、確実な知識・技術の習得ができます。しっかりした基礎知識・技術を持って就業することで、林業の課題である安全性の向上や高い離職率の低下も期待できます。

 さて、本題である中大規模木造建築に関してですが、開設62年目の研究機関である栃木県林業センターの敷地内に、林業センター・林業大学校の建屋として「研修・研究棟」、学生が雨天時でも屋内でチェーンソー伐倒等の実習ができる「全天候型実習棟」、高性能林業機械等を整備・保管できる「林業機械整備棟」、木製ガレージの「公用車車庫」の計4棟をすべて木造で整備しました。

研修・研究棟

全天候型実習棟

林業機械整備棟

 今回はメインとなる建物である「研修・研究棟」について御紹介します。
 研修・研究棟は、林業大学校としては学生の学び屋であり、林業センターとしては林業・木材・きのこ等の研究施設でもある、「研修と研究の拠点」を担う施設です。そうしたソフト面だけでなく、ハード面でも本県の林業・木材産業を象徴するような建物にしたいという思いから、とちぎ材を100%使用し、さらに最大の特徴として、今後の普及を見据え、可能な限り一般流通の規格材を使うこととしました。
 そのために、企画段階から栃木県木材業協同組合連合会の「木材コーディネーター」による支援を行い、設計・木材調達・施工者と納材業者・プレカット工場との連絡調整など、あらゆる面で発注者や設計者、施工者をバックアップしてきました。
 県内には品質の良い県産材やプレカット工場があるにもかかわらず、「木造で非住宅物件を設計したいがどうすればいいかわからない」という建築士の方のために、木造で難しいといわれる「大スパン架構」を実際に見ていただけるよう、部屋ごとに架構形式を変え、現しで仕上げています。
 林業大学校の学生も、自らの校舎・教室そのものが教材となり木構造について見て学ぶことができ、「自分の伐採した丸太がどのように建築に使用されるか」を実感できます。

200m2・天井高さ6mの吹き抜け大空間「交流スペース」

10m×10m・平行弦トラス架構の学生用教室

日光杉並木をイメージした50mの大廊下

スパン10m張弦梁を用いた「資料室」

 また、内装材や家具・什器も、県内全域の様々な特徴・魅力ある製品を随所に使用しており、視察等で来場した方が「この内装が欲しい」となれば、すぐに製造企業を紹介できます。

工夫を凝らした内装・家具

 このように、各部屋ごとに構造・内装・サイズ等の特徴を大きく変えることで、木材の新たな需要先として期待される非住宅分野におけるショールーム的な役割を期待しています。

 研修・研究棟がその役割を最大限発揮し、とちぎの林業・木材産業の明るい将来を照らす施設となるよう、私たち研究員も一丸となり努力していきたいと思います。

  • 国土交通省
  • 林野庁
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