木造ビルを建ててみたい
オーナー、設計者、施工者
の皆様へ
最近メディアにも取り上げられることが多くなった木造ビル。
建ててみたい、チャレンジしてみたいと思われる方は、ぜひ一度、本事業の成果に目を通してみてください。
掲載されている5つの構法は、用途(事務所・共同住宅)、4階建てという条件に加え、スパン*や面積などの規模についても適用範囲を絞り込み、具体的に使用する木質材料、耐力要素の仕様なども実装可能なレベルで検討を行っています。
建ててみたいビルの規模に合致するものがあれば、ぜひ一度、該当する構法提案者チームにご相談下さい。
4階建て以上の高いビルを建てたい場合でも、上層の4階分を木造とし、下層を鉄骨造や鉄筋コンクリート造とすることも可能です。
*スパンとは、建物を支える柱の間隔をいいます。
ABOUT本事業について
4階建て木造ビルへの
チャレンジ
本事業は炭素貯蔵量や二酸化炭素排出削減に貢献するため、建築分野での木材利用を促進する支援体制を整備するというものです。中大規模木造建築の木造化は普及の途上にあることから、特に4階建て木造ビルについての経済的、合理的な構法を提案しています。構法ごとに設計にあたって必要なデータや実装に向けた具体的な注意点も示しています。各構法の提案者から提供される最新情報も入手し活用を進めていただきたいと考えています。
建築物への木材利用はなぜ必要なのでしょうか?
近年環境配慮への社会的関心が高まっており、2030年温室効果ガス46%削減や2050年カーボンニュートラルに貢献するため、建築分野では省エネ対策に加え、森林での炭素吸収と建物への炭素固定等の観点から木材利用促進が重要になっています。
令和4年には木材利用の促進につながる防耐火規制等を合理化する「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に資する法律等の一部を改正する法律(建築物省エネ法及び建築基準法改正)」など、建築物での木材利用促進のための法改正が行われています。
一方、令和5年度建築着工統計によると、低層建築物、特に住宅では木造化率が高い一方、中高層建築物や非住宅では木材利用が進んでいないことがわかります。このような状況を踏まえ、中高層建築物や非住宅では木材利用の拡大を目指し、住宅では国産材の活用を推進していく必要があると考えられます。
木造ビルにチャレンジする人を増やすにはどうすればいいのか?
建築物を建てるには、オーナー(施主)、設計者、構造設計者、施工者、材料供給者+材料の加工者(木造の場合はプレカット工場)がそろう必要があります。鉄骨造や鉄筋コンクリート造、また、木造であれば戸建住宅やアパートなどの規模のものは、これらすべてのメンバーがそろっており、苦も無く実現することができます。
しかし、木造ビルについては、どの立場の担い手も足りないのです。
そこで、本事業では、木造ビルを技術・材料供給の両面から提案ができること、木造ビルにチャレンジする方をサポートする体制を構築することを要件としました。
このように、新たな担い手に参加しやすい環境を整えることで、木造ビルにチャレンジする方を増やしていこうとしているのです。
木造では4階建てが新しいチャレンジ
木造の建物といえば、戸建住宅をイメージされる方が多いでしょう。戸建住宅では基本は3階建てまでで、設計者、施工者、材料供給者や材料の加工者の対応が既にできており、適正コストでスムーズに建てられます。新しいチャレンジはほとんど必要がない、社会全体として生産体制が整っています。これらの生産体制を利用して、3階建てまでの建物を木造で建てることができ、それらは近年増えてきました。しかし、4階建てになると、新しい取組となり、普及させるためには生産体制も整えていく必要があるのです。
一般的な設計事務所や工務店、建設業者が建てられる規模
いきなり10階を目指すとなると、技術的にもハードルが高くなりすぎます。10階建ての1階部分には、9階分の荷重がかかってきますし、それに応じて地震力なども大きくなるのです。また、普及を目指すとなると、なるべく多くの方に取り組んでいただく必要がありますから、各地方で活動されている設計者や施工者が取り組みやすい規模、構法である必要があります。
ニーズがある規模と用途
東京や大阪、名古屋といった大きな都市では、10階を超えるビルも多くありますが、日本全国でみると2階建て以下の建物が多く、地方では市街地でも4階建て程度のニーズが多くなっています。また、用途としては、事務所や共同住宅は最も需要が多いものとなります。建物の設計では、用途に応じて適用すべき法律や技術基準が異なりますし、構造計算を行うための積載荷重等も異なります。そこで、まず需要が多い用途をターゲットとすることで、検討しなければならない項目を固定し、仕様などを共有化することで、より早く実装に向けての技術を整備することにしました。
また、事務所は比較的広い空間を確保するために柱や壁の間隔を広げることが必要ですが、共同住宅の場合はそのような必要もなく、地震力などに抵抗する壁もたくさん入れられます。木造には様々な構法があることはすでに説明しましたが、構法によって得意とする空間が異なりますので、対照的なこの2つの用途を設定することで、どの構法からも提案がしやすくすることをねらいました。
FIVE SUGGESTIONS5つの提案構法
木造4階建ての事務所や共同住宅をモデルに、コスト、施工性等において高い競争力を有し、広く展開できる「構法」とそれを実装する「部材供給の枠組み」を公募し、選定された5つの構法を「構法解説集」としてとりまとめました。
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1
入手しやすい
一般流通材を利用した在来構法1階:店舗、2~4階:事務所または共同住宅
延べ面積:500m²程度
建築面積:130m²程度
スパン(柱間隔):3.185m~5.915m
階高:2.8m~3.5m
1時間耐火構造(告示仕様)による被覆
水平力のみを負担する木質材料は現し
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2
GIRとスギの大断面集成材による
一方向ラーメンフレーム構法事務所
延べ面積:700~2900m²
建築面積:180~730m²
スパン(柱間隔):最大7.2m(桁行は面材耐力壁1.8m)
階高:3.6m程度
75分間準耐火構造(燃えしろ設計)
燃えしろ設計を行う躯体の木質材料が現し
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3
カラマツの大断面集成材による
一方向ラーメンフレーム構法共同住宅、事務所など
延べ面積:3000m²
建築面積:1000m²
スパン(柱間隔):8.19m(桁行は耐力壁5.46m)
階高:3.3~3.9m
1時間耐火構造(告示による被覆仕様)
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4
枠組壁工法による
共通標準パネル化構法共同住宅、事務所など
延べ面積:3000~4000m²
建築面積:750~1000m²
スパン(耐力壁間隔):6.3m
階高:3.0m
1時間耐火構造(告示による被覆仕様)
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5
LVLと鋼製ブレースによる
オープンな空間を実現する構法事務所など
延べ面積:特になし、建築面積:特になし
スパン(柱間隔):ブレース取り付け部1.82m
階高:2.7~3.7m
1時間耐火構造(告示による被覆仕様)
水平力のみを負担する木質材料は現し