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リレーコラム もくlog
リレーコラムもくlogは、木造建築に関する出来事や気になる情報、各取り組みへの感想など
協議会会員を中心にリレー形式で定期的に掲載するページです。
- 執筆・制作者
- 小林謙介(県立広島大学 生物資源科学部 生命環境学科 環境科学コース)
- 掲載年月日
- 2026年1月15日
- 掲載年月日
- 2026年1月15日
木材と環境問題
私が授業で学生に、「木材は環境に良いと思いますか?」と尋ねると、多くの学生が「はい」と回答する。そこでもうひとつ、質問を投げかける。「なぜ環境に良いのですか?」と。この質問については、答えられない学生が少なくない印象がある。
木材は環境に良いというイメージを持ちの方も少なくないと認識するが、なぜ環境に良いのだろうか? より低環境負荷な木材の使い方とは何なのだろうか? 今回のコラムでは、そのヒントについて考えてみたい。
そもそも木材はどこでどのくらい使われているのか?
木材と環境問題について考えるうえでは、そもそも、木材という資源がどこでどのくらい使われているのかをとらえることが重要になる。そこで、我が国で消費される木材を対象に、木材の一生(ライフサイクル)において、どこでどのように木材が使われているかを分析した。図1に、木材のライフサイクルにおけるマテリアルフロー(2022年ベース)を示す※1。

図1 我が国における木材(用材)を中心としたマテリアルフロー
図1に示すように、我が国において用材(紙などは含まれない)として用いられる木材のほとんどは、製材・合板などの建築用材であることが分かる。この点から、建築物における木材の利用のあり方が、今後の持続可能な木材利用のための大きなカギを握っていることがわかる。
それぞれの工程でどのくらい環境負荷を発生させているのか?
製品の製造やサービスの提供などにおいて、その環境負荷を定量的に評価する手法にライフサイクルアセスメント(LCA)がある。LCAを用いることで、木材ライフサイクルにかかわる様々な環境影響を評価することができる。
また、ひとことで環境問題といっても、気候変動、資源枯渇、廃棄物、酸性化、光化学オキシダントなど実に多様な影響領域の問題がある。そこで、社会的な関心が高い温室効果ガスの排出量で評価した場合、様々な環境影響を総合的に評価した場合の結果について考えてみたい。
①温室効果ガス排出量の場合
はじめに、社会的な関心が高い温室効果ガスの排出量を示す。なお、ここでは、一時的に地上に固定される炭素および焼却に伴って放出される炭素などは除いていて、化石燃料等の利用に伴うCO2排出量のみを算定した結果を示す(図2)※2。この結果から、丸太生産、製材・合板などの加工などの加工プロセスの影響が大きいことが分かる。

図2 木材ライフサイクルにおけるプロセス別のCO2排出割合
②多様な環境影響を総合的にとらえた場合
多様な環境影響を総合的に評価する手法が提案されている。これらのうち日本で最もよく利用されている手法の一つにLIME(日本版被害算定型影響評価手法)があり、本手法を用いて環境影響を分析した。その結果、様々な環境影響を一つの指標に取りまとめた「統合化」では、丸太生産の影響が圧倒的に大きくなっていることが分かる(図3)※2。丸太生産工程が大きい理由を探ると、一次生産の影響が大きい。これは、森林を伐採した後に再造林が行われていないことにより、次の資源が生産されないことによるダメージである。
今回の検討では、再造林率(伐採面積に対する再造林面積の割合)を50%として計算している。なお、我が国の直近の再造林率は、実際にはこれよりも小さい値である可能性もある。そのため、本結果よりも実際のインパクトは大きいことが予想される。

図3 LIME3を用いた統合化の分析結果
いつまで使い続けられるのか?
再造林率の低迷は、私たちの子供や孫の世代まで、持続的に利用が可能な資源であり続けられるか? という疑問につながる。そこで、再造林率をパラメータにした将来にわたる森林資源の蓄積量を推計した(図4)※3。2015年時点の検討ではあるが、直近では過去に植えた森林資源が成長して増加するものの、その後は減少することが確認できた。今後は、将来の木材利用予想量を踏まえつつ、どこまで再造林を行うか、十分な議論を行うことが重要と思われる。

図4 森林資源の供給可能量の将来推計(2015年時点での分析)
参考文献:
※1) 若林國久、森岡心、小林謙介:木材の建材利用におけるMFAとLCA実施による環境ホットスポット分析 ―その1 2022年を基準としたマテリアルフロー分析―、日本建築学会大会、2025.9
※2) 森岡心、若林國久、小林謙介:木材の建材利用におけるMFAとLCA実施による環境ホットスポット分析 ―その2 LCAの実施及び環境負荷削減策の検討―、日本建築学会大会、2025.9
※3) 小林謙介、若林國久:建築における環境面からの木材の有効利活用に関する研究 全国及び広島県の動態分析、日本建築学会環境系論文集 No.720 pp.255-261、2016.02