リレーコラム もくlog

リレーコラムもくlogは、木造建築に関する出来事や気になる情報、各取り組みへの感想など
検討委員会委員を中心にリレー形式で定期的に掲載するページです。

分かると面白い木材のこと
執筆・制作者
青木謙治(東京大学大学院 農学生命科学研究科 准教授)
掲載年月日
2022年12月1日

 職業柄、木材や木質材料に関する基礎知識の講演を頼まれることが多い。最初に依頼されたのは前職の森林総合研究所に勤めていたころで、公共建築物等木材利用促進法(木促法)が施行されたことにより、これまで木造になじみのなかった建築士や建築主事の方々に木造建築や木材の知識を身に付けて頂くための講習会を開く必要が生じ、その中の1コマで材料の事を取り上げる必要があり、筆者に依頼が来たのである。こういった講習会は国土交通省やその外郭団体、あるいは林野庁が主催のものから、都道府県の行政側や建築士会などが主催するものまで多岐にわたるが、もう10年くらいはこういった講習会が続いている。延べ何回くらい話をしただろうか。今年度に限っても既に4ヶ所で木材・木質材料の基礎知識的な講習をしている。

 これらの講習会ではだいたい2時間から3時間程度で木材・木質材料の概略をざっと話すことが多いのだが、同じような内容を大学では半年15コマかけて、あるいは複数の講義に分けてより詳細な内容を講義しているので、当然であるが講習会で話している内容は本当に表面的な入口部分のお話だけになってしまう。それでも、これまで木材や木質材料に関する教育をほとんど受けてこられなかった受講生の皆さんからは、木材の特徴がザックリと把握できて大変勉強になったという感想をいただけたりして、それなりに役に立つ情報提供ができているのはないかと自負している。ちなみに、木材の基礎知識的な内容を中心としたものと、木質材料の種類やJAS規格、基準法との関係などを話すものと大きく分けて2つのバージョンがあり、依頼の内容に合わせて使い分けている。

 最近でこそ、大学の建築学科で木造建築に関する内容を扱うところが増えてきたようであるが、やはりまだまだ少ないのが現状だろう。「建築構法」の中で2,3コマが木造の構法に関する話だったり、「建築材料」の中で1コマが木材・木質材料の話だったりすることが多いのではと想像するが、「木質構造」という講義を開講しているところは稀だし、専門の先生が講義をするわけではなかったりもするので、やはりそこで教える内容は十分とは言えないところも多いと思われる。なので、やはり木材や木質構造に関する知識は、実務に入ってから必要に迫られて学びなおすという形にならざるを得ないのだろう。

 私が学生のころと比べると木材利用や木造建築を取り巻く状況は大きく変化し、この10年ほどは強い追い風が吹いていると言える状態がずっと続いている。これまで木材や木造建築に関心を持たなかった方が参入してくるのは大変ありがたい事であるが、木質構造の独特の考え方や設計法を学ぶのと同時に、やはり木材・木質材料の基礎知識にも目を向けて頂きたいと思っている。各種マニュアルや規準書を基に、告示の基準強度で計算すればいいという考え方では、どこかで痛い目にあうのではないかと心配してしまう。鋼材やコンクリートとは全く異なる性質を持つ木材、そしてその特徴を受け継ぎつつも新たな性能を付与した各種木質材料について、一通りの知識を持ったうえで設計業務にあたって頂けると、魅力的で、尚且つ安心・安全な木造建築物を実現できるのではないだろうか。そういう未来のために、このポータルサイトがあると思うし、ここを通じて様々な情報交換が進むことを期待したい。ついでに、木材や木造建築の事をもっと深く知りたいという方は、筆者の大学で社会人特別選抜修士課程:木造建築コースを開講しているので、興味があれば是非そちらへの入学をご検討頂きたい。木材のことを深く知れば知るほど、木造建築が面白くなってくるはず!です。

(次回の執筆者は宇都宮大学 地域デザイン科学部 教授 中島史郎氏を予定しています)

もくlogの掲載日について
掲載年月日
2022年12月1日

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(土日祝にあたる日は後ろにずれる事があります)
今後の更新を楽しみにしていただければと思います。
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