リレーコラム もくlog

リレーコラムもくlogは、木造建築に関する出来事や気になる情報、各取り組みへの感想など
協議会会員を中心にリレー形式で定期的に掲載するページです。

建築業界・木質業界に貢献できる学生の教育・研究
執筆・制作者
関東学院大学 建築・環境学部 教授 神戸 渡

1.関東学院大学について

 まず、本学の紹介をしたいと思います。関東学院大学のキャンパスは、金沢八景駅と関内駅を最寄りとしています。私の研究室は金沢八景キャンパスにあります。現在、NHKの大河ドラマ「べらぼう~べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」で蔦屋重三郎がとりあげられていますが、彼が見出した絵師 歌川広重も金沢八景が有名でして、これが駅名となっています。また隣にある金沢文庫は、日本最古の図書館の名称に由来しています。関内キャンパスの近くには現在日本最高高さの木造建築が近くにあります。そのような新しいもの、歴史的なものに囲まれた環境で研究活動・教育活動が行われています。

金沢八景のプレート

金沢八景キャンパス

2.研究室での必修科目

 私の研究テーマは、木質構造の構造分野となります。部材、接合部などの構造性能に関する研究を行っております。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、その中でも特に力を入れているのは、接合部の割裂耐力に関する研究や、木材の座屈強度に関する研究となります。

 とはいえ、研究活動に初めて取り組む学生にとっては難しい課題だと思います。私の研究室では、筋かい耐力壁の組立作業および水平加力試験を学生主体で取り組んでもらうことを必須としています。木材の重さなどを身をもって知ってもらうこと、組み立て作業をする際はお互いに声をかけあい共同作業の大事さを知ってもらうこと、これらのことを大事にしたいと思い、毎年取り組んでいます。

 本研究室では、業者の方々にお力添えをいただき実験をすることが多いです。そのようにお世話になる方々に、「おはようございます」「ありがとうございました」「おつかれさまでした」を大きな声で、笑顔で伝えることを学生達にはよく指導します。これは将来建築業を担う彼らにとって、現場で最初に必要になることは上記のことであることを知ってほしいと思っています。

 また耐力壁の水平加力試験は、変位計の使い方、試験体の観察の手順など、基本的なことが集約されていると思います。

 少々古いタイプかもしれませんが、一度で大事なことが学べるというのが壁試験の良い点ですので、継続しております。

壁の組立および試験の様子

3.研究

 研究において、昨年度取り組んだものを紹介したいと思います。

 近年、中大規模木造が注目されていますが、その関係で耐力壁に配管などを通すための貫通孔を設ける必要があります。貫通孔を設けることで構造性能が低下することが予想されますが、必ずしも十分に実験されているわけではないようです。特に、中大規模木造用の耐力壁は高倍率なものが多いので、耐力が大きいものほどわずかな欠点が耐力を低下させる要因となりえます。そこで、貫通孔の大きさや位置、貫通孔周辺の釘打ち仕様などを変化させた試験体を用意し、加力試験を行いました。実験は、36度近い環境での実施となりました。近年は酷暑となることが多く、そのような暑さの中での実験、学生たちは大変だったと思います。ファン付きのベストを着て、水分・塩分を補給しながら、作業し、無事に研究を終了しました。この経験は社会に出てからきっと役立つものと思います。この実験では、職業能力開発総合大学校の藤野先生にお力添えをいただきました。
https://www.uitec.jeed.go.jp/


壁試験の様子

 神奈川県の杢巧舎、悟工房との共同研究で、伝統継手の強度に関する研究をすすめています。こちらの会社は石場建てを用いた住宅などを手掛けており、伝統的な技術を発展させることを考えており、その一環として、まずは継手の強度試験を行いました。この研究では学生たちは大工さんたちと直接やりとりし、ディスカッションをしました。普段接することがない職人さんとの接することは大変なこともあったと思いますが、その経験は近いうちに活きてくると思います。
杢巧舎:https://mokkohsha.jp/、悟工房:http://satoru-k.net/

継手試験およびディスカッション

4.学外活動

 研究活動の他に、新しい木造建築の見学会を実施しており、様々なことを学ばせていただいております。

 山形を拠点としている建築家 鍋野様の自邸、天童市に令和に建築された五重塔を見学させていただく機会を得ました。日本工業大学 建築学部の那須研究室の学生たち、山形大学の汐満先生・濱先生と共に見学に伺いました。鍋野様に丁寧に説明いただき、設計と実物をリンクしながら学ぶことができました。天童市の常安寺の五重塔の見学にあたり、ご住職がとても丁寧にご説明していただき、見学することができました。またご住職のご厚意で、塔の内部の深くまで見学させていただき、大変貴重な機会をいただきました。

東戸塚にある大成建設 技術センターも見学させていただきました。現在、地球環境の観点から、省エネ・二酸化炭素の削減が非常に重要となっています。そのような社会的需要に対して、ゼネコンがどのような取り組みをしているかなどは建築・環境学部としては密接な観点です。丁寧に説明していただき、多く学ぶことができました。

鍋野邸

常安寺 五重塔

鍋野友哉アトリエ:https://tmya.jp/

常安寺 五重塔 建設の記録:https://www.youtube.com/watch?v=tvAqx4OOioE

大成建設 技術センター:https://www.taisei-techsolu.jp/tech_center/

大成建設 技術センター

以上、ざっくりではありますが本研究室の活動などをご紹介させていただきました。木質構造を軸として、様々なことを学びながら、研究を進めさせていただいております。教えていただいたことが、学生達の成長につながり、業界等に役立つ人材を世に送り出したいと考えております。今後とも、多くの方々にお教えいただくことがあるかと思いますが、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

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