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リレーコラム もくlog
リレーコラムもくlogは、木造建築に関する出来事や気になる情報、各取り組みへの感想など
協議会会員を中心にリレー形式で定期的に掲載するページです。
- 執筆・制作者
- ラウラ・コピロウ / Laura Kopilow(フィンランド大使館商務部 上席商務官)
- 掲載年月日
- 2026年4月15日
- 掲載年月日
- 2026年4月15日
フィンランド人にとって、森は友人のような存在です。長い時間をともに過ごしてきた、共存のパートナーでもあります。
フィンランドの国土の約75%は森林、約10%は湖や河川などの水域で構成されており、「森と湖の国」とも称されます。北欧といえば白樺のイメージが強いですが、それもそのはずで、実際には森林の約90%をマツ、トウヒ、白樺が占めています。世界的に知られるサウナも(「sauna」はフィンランド語で、560万の人口に対して、320万個くらいあります)、こうした豊かな森林資源を背景に、木材をふんだんに用いて建てられるのが一般的です。

初めて入ったサウナ(Photo:Laura Kopilow)
フィンランドは世界幸福度ランキングで9年連続1位になっています。一方で、その結果に対するフィンランド人の反応は、「何かの間違いではないか」といった冷静で皮肉を交えたものが少なくありません。これは、日本人と同様の謙虚さに加え、自ら考え、疑問を持つことを重視する教育の影響とも言えるでしょう。
幸福を感じる理由は多様ですが、例えば「最近幸せを感じた瞬間は?」という問いに対して、「森を散歩したとき」と答える人もいます。サウナと同様に、森は日常の中で心身のバランスを整える重要な存在です。特別な準備を必要とせず、食事をするのと同じくらい自然に生活に組み込まれています。
フィンランド人にとっての森は、友達のような存在だと書きましたが、人のように何かを求めてくることはありません。そこでは、何かを達成する必要も、期待に応える必要もなく、ただ自分らしくいるだけで十分です。
北欧には「自然享受権」という考え方があり、自然の恵みはすべての人に開かれています。たとえ私有地であっても、誰もが自由に立ち入り、ベリーやキノコを採取し、散策やキャンプを楽しむことができます。この権利は現地の人々だけでなく、日本人を含めた訪れる人々にも等しく認められています。
また、多くのフィンランド人は自宅とは別にサマーコテージを所有しています。私の家族のコテージも伝統的で簡素な造りで、小さな島にあります。かつては電気も水道もなく、現在も電波が悪く、シャワーはありません。サウナと湖で体を洗い、日常のあらゆる行為に手間がかかります。しかし、こうした「不便さ」こそが、自然と向き合い、その大切さを実感し、人生において本当に重要なものに気づくきっかけを与えてくれます。

サマーコテージ(Photo:Laura Kopilow)
このような体験を幼少期から重ねることで、多くのフィンランド人は自然への理解と敬意を育んでいます。
フィンランドのデザインや建築にも、その価値観は色濃く表れています。木材を生かしたプロダクトが多く、例えばアルテックの「スツール60」に代表される家具は広く知られています。また、日本でも「Nikari(ニカリ)」の家具や「Secto Design(セクト・デザイン)」の照明を目にする機会が増えています。

リビング(Photo:Laura Kopilow)
東京オリンピックでは、常設パビリオンを15か月間にわたり出展した唯一の国がフィンランドでした。このパビリオンは最大10回の再建築が可能な木造建築(主にLVL)で、フィンランドの林業大手企業である「Metsä Group(メッツァ・グループ)」によって手がけられ、その革新的な構造と持続可能性で注目を集めました。


MetsaPavilion(Photo:Petri Asikainen for Embassy of Finland)
また、2024年にヘルシンキにオープンした、世界最古の現存する株式会社である林業大手「Stora Enso(ストラ・エンソ)」によるオフィス兼ホテルの複合施設「Katajanokan Laituri」は、フィンランド最大のマスティンバー建築としても知られており、CLTの革新的な活用とサステナブルな設計により、数々の賞を受賞しています。
こうしたデザインはフィンランド人にとって一部の特別なものではありません。また、特別な日だけのためのものでもありません。フィンランドの保育園や病院など、日常のさまざまな場面で使われています。毎日を特別にしてくれるデザインです。使いやすく心地よいデザインや建築、空間は「誰のものでもある」という考え方に基づいており、いわば「幸福のインフラ」とも言える存在です。幼い頃からこのような体験をすることで、デザインやサステナビリティへの感覚も自然と育まれていきます。
自然、そして木は、フィンランドのライフスタイルと切り離すことのできない存在です。
同じく木とともに生きてきた日本の人々や企業と、その知見や技術を共有し、ビジネス、そして未来へとつなげていければ幸いです。
ラウラ・コピロウ / Laura Kopilow(フィンランド大使館商務部 上席商務官)
フィンランド・エスポー市出身。
日本の地元は北海道・函館市。
高校生の時に北海道・函館の白百合学園に留学、その後ヘルシンキ大学在学中に早稲田大学政治経済学部に留学。
文部科学省の国費留学生として北海道大学大学院に入学、修了。
2018年からフィンランド大使館商務部にて建築、デザイン、食、サウナを担当し、
フィンランドと日本の連携による新しい価値創出を実現するべく活動している。(https://www.instagram.com/laura_from_finland/)
またパフェ好きインフルエンサー、パフェタリアン(自分で作った造語)としても知られ、
SNSやメディアで日本の素晴らしいパフェ文化を発信。(https://www.instagram.com/laura_finrando/)
出演:『世界一受けたい授業』(日本テレビ)
『Youは何しに日本へ?』(テレビ東京)
『イキスギさんについてった』(TBS)
『サタデーステーション』(テレビ朝日)など
著書:『フィンランド発 幸せが見つかるライフスタイル』(https://amzn.asia/d/099iJ6Op)