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リレーコラム もくlog
リレーコラムもくlogは、木造建築に関する出来事や気になる情報、各取り組みへの感想など
協議会会員を中心にリレー形式で定期的に掲載するページです。
- 執筆・制作者
- 功刀 友輔(株式会社マルレーヴ 代表取締役社長)
- 掲載年月日
- 2026年5月15日
- 掲載年月日
- 2026年5月15日
昨年、オーストラリア・シドニー近郊にある「Bradfield First Building」を見学する機会がありました。
大きな木架構、深い軒、全面ガラスの外装、緑化された屋根。日本ではあまり見ることのないデザインであり、その建築思想に触れる機会も、まだ日本では少ないのではないでしょうか。
この建築は、オーストラリアで進められている新都市開発「Bradfield City Centre」の最初の建築として位置付けられており、環境共生に強く配慮しながら、新しい街をつくる手段として木造を選択している印象を受けました。

Bradfield City Centre オーストラリア
また、建築全体として、工場加工やモジュール化などを強く意識しているように感じ、こうした考え方には、日本のプレカットにも共通する部分があるように思います。
私は以前のコラムで、プレカットについて書かせていただきました。プレカットは、住宅建築における労働力不足を補い、在来軸組工法を大量かつ安定的に供給するために発展してきた技術です。一方で、刻みの技術を大工から奪っている側面もあり、その功罪についても触れました。
大工の減少や技術継承の停滞は、タイでも見られます。今年度、タイのラジャマンガラ工科大学内において、日本国産材のプレカット部材を用いたプロジェクトに関わる機会がありました。その中で、日本の木造生産システムやプレカット技術は、日本国内だけでなく、海外においても市場の可能性があることを感じました。

ラジャマンガラ工科大学内 タイ
改めて感じたのは、日本のプレカットシステムや施工スピード、品質管理の仕組みが、世界的に見ても非常に高度化されているということです。
一方で、その高度さは、ある意味ではガラパゴス化しているとも感じています。
日本では、
・プレカットCAD・CAM
・工場加工
・施工図(プレカット図)
・建築金物
・品質管理
・現場施工
まで含めた木造生産システムが極めて高度化されています。
これは、日本の大工やプレカット業界、設計者、流通業者が長年積み重ねてきた結果であり、日本の木造技術の大きな強みでもあると思います。
しかし一方で、日本国内の住宅市場は縮小を続けています。
令和7年度の新設住宅着工戸数は71万戸となり、70万戸割れが目の前に迫っています。私がプレカットCADを触り始めた2000年代初頭には120万戸近くあった市場が、ここまで縮小してきたことになります。
人口減少、住宅価格の高騰、単身世帯の増加に加え、改正建築基準法への対応など、住宅業界を取り巻く環境は大きく変化しています。
さらに最近では、ナフサ価格の上昇や供給不安による接着剤、副資材、住宅設備への影響などもあり、木造建築全体のコスト構造そのものが変わり始めているように感じています。
こうした中で、プレカット市場(≒木材の市場)も、これまでと同じ形では成り立たなくなっていく可能性があります。
だからこそ、今まで取り組んできたことを改めて見直し、その上で勇気を持って新しい展開へ踏み出す必要があるのではないでしょうか。
例えば、
・非住宅木造
・海外展開
・DX
・人材育成
などは、決して突然現れた新しいテーマではなく、これまでも業界の中で取り組まれてきたことです。
住宅市場が縮小する中で、それらを「周辺分野」としてではなく、本格的に向き合う段階に来ているように感じます。
今回、オーストラリアやタイで木造建築に触れながら感じたのは、「木造そのもの」よりも、「木造を支える生産システム」の重要性でした。
どれだけ魅力的な木造建築を設計しても、
誰が設計するのか。
誰が加工するのか。
誰が建てるのか。
どう維持していくのか。
という仕組みがなければ、木造は広がりません。
住宅着工戸数が再び大きく増加することは難しいかもしれません。しかしその中でも、日本の木造技術やプレカットの考え方は、まだ多くの可能性を持っているように感じています。
海外で木造建築を見ることで、逆に日本の木造の価値を再認識する機会となりました。